SOSEKI#1

すべてのアーティストは貴重な存在 - 出られないこの世で生きていくのは大変なことなので、この刹那的な期間だけでも、少しでも快適な生活が送れるようにすることが必要です。その時、詩人の天職が宣言され、画家の使命が明らかにされるのです。すべての芸術家は、人間の世界を癒し、人間の心を豊かにしてくれるからこそ尊いのです。 この生きることが困難な退屈な世界を取り払い、目の前に優美な世界を映し出すもの、それが詩であり、絵画である。あるいは、音楽や彫刻である。正確には、世界を投影することが問題なのではありません。直視すればいい、そこに詩が生まれ、歌が立ち上がる。たとえアイデアが書き留められなくとも、クリスタルの音は心に響くのです。絵の具がキャンバスに広がらなくても、色の輝きが内側に映し出されるのです。自分の生きている世界を観想し、無益で混沌としたこの世の世界を、純粋さと明晰さをもって、心のカメラに封じ込めればよいのです。 だからこそ、一句も書いていない無名の詩人や、一枚のキャンバスも描いていない無名の画家が、大富豪よりも、王子よりも、くだらない世界のあらゆる有名人よりも幸せなのは、前者が人生の観察の仕方を知っていて、あらゆる先入観から自分を抽象化して、純粋の世界に入り込み、独自の宇宙を構築して、エゴイズムの制約を一掃できるからなのだ。 Natsume Soseki, in. Oreiller d’herbes SILVER WORDS PROJECT ©